おばぁちゃん、退院

隅棚の小さいクリスマス飾り


いい日の月曜日、病院にお迎えに行くと「あっ、あんた達よう来てくれたわ、
此処は恐いとこやで、人を丸裸にしてホースで水かけて、頭からバケツで
ザーッとかけるんやで。これは、虐待です。事件です。テレビとかに出てへん
かったか?恐いとこや」と大騒ぎ。兄嫁が家に帰ると暫くお風呂に入れないから
退院前に入れておいて貰うように頼んだらしい。
頭からお湯をかけられてよほど吃驚したらしい。病院の人は老人のわぁわぁ
ゆうのは、慣れっこで、納得させるということもなく仕事をしたのだろうが
老人というのは、何事もスローペースで、耳が遠かったりして、理解も遅く
ただただ、何も分らないうちに裸にむかれお湯をかけられ頭を洗われてパニック
になって、頭の線がぶちぶち切れたのだろう。もう少し、優しい気持ちで接して
くれたら、良かったのに。でもおばぁちゃんの場合、すぐ退院だったから良かった。
というのも、家に帰って叔母さんと甥も来て、賑やかにコタツのおばぁちゃんの
いつもの席に座って、買ってきてあったバースデイケーキ(おばぁちゃんは12月
12日生まれ)で1日早いけど、「お誕生日、おめでとう!」と言うと「有難う」
ローソクを吹き消して自分で「ハッピーバースデイ」と歌った。
見る見るうちに顔の相が穏やかになって、自分でテレビをつけ「北朝鮮と書いて
るな」と字幕を読んでいる。叔母ちゃんが「私、分る?」と聞くと「わての妹
やがな」兄嫁が「私は?」と聞くと笑って「あんたは、誰かいな?」とおちょくる
余裕さえみせる。年寄りにとって我が家がどんな薬よりも良いのだと言う事を
改めて、実感した。