秋深し 

ぼやぼやっとしている内に、早や今日から11月。
年齢をふるごとに時間の経つのが、早くなるのはどうゆうことかしら?
子供の頃は、一年が長かった。何かの本で子供の頃は脳のしわにしっかりと
記憶するので、一年が長く感じられると読んだことがある。
年を取ると、脳がだんだんすべすべになって物事を細かく記憶しないので
早く感じられると書いてあった。
母が、呆けてきても昔の事は良く覚えていてテレビで昔の映画などを見ると
「あ、岸恵子さん」とか野球を見ていると「あ、長島さん」とか言っていた。
記憶が段々若返って、看護婦さんが「ああチャン、おいくつ?」と聞くと
「いくつに見えます?」「40位?」「まぁ、そんなにいっていませんよ。」
「じゃぁ、30位?」「もうちょっと」「25かな?」「23ですよ」と
言っていた。私の事は、自分よりずっと年上だと思っていて、おばさまとか
おねぇさまとか、先生とか呼んでいた。「先生のお名前は?」と聞くので
「M子」と答えると「あ〜ら、うちの娘とおんなじ」と言っていたから名前は
覚えているらしかった。夕方になると「もう、失礼します。うちは母が厳しくて」
というので、「おうちに電話して、今日は泊まって貰いますって言うといたから」
と言うと、「そんなら、安心」とその気分は女学生みたいだった。
百人一首なども上の句を読み上げると下の句はすらすら、言っていた。
若い時の記憶は、本当にしっかりと刻み付けられているのだなと感心していた。
この年になって、同窓会が楽しいのは、共有する記憶が同じで、母ではないが
一気に昔に飛んでいけるからだろう。
母を看ていて、人生の終焉近くの呆けは神様の贈り物ではないかと感じた。
最後を、誰にも気を使わず過ごさせてあげて良かったと思う。
他人に凄く気を使う人だったから、正気だったらシモの世話など耐え難かった
のではなかったかと、それで愚痴とか、泣き言を言われるよりこちらも楽だった
と思う。よく、一人で歌を歌っていたが、私が子供の頃に母の歌など聞いた事は
なかった。苦労が多くて歌も忘れていたのかと思ったことだった。


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