大江健三郎「定義集」から


「注意深いまなざしと好奇心」
4月18日の朝日新聞大江健三郎氏の「定義集」の
NO1が始まった。書いておきたい記事だったが、あれこれ
書くことがあって今日まで書けなかったので書いておこう
と思う。


どんな内容かと言うと、氏のご子息の光さんは、知的障害
を持っていられて(ご存知の方も多いと思うが素晴らしい
音楽の才能もお持ちだ)自立した歩行の練習のため支えな
しで歩く歩行練習を始められた。
その途中で小石につまずいてバタンと倒れたのだそうです
そんな時、光さんは気持ちが動転して自分を責めている
のだそうです。
その時、自転車でやって来た壮年の婦人が「大丈夫?」と
声を掛け光さんの肩に手を掛けたそうです。
光さんは、見知らぬ人に身体を触られるのと犬に
吠えられるのが最も望まないことだそうです。
そこで氏は、しばらくほうって置いてくださいと言われた
そうです。その方は憤慨して立ち去られました。

氏はその時、少し離れた所で自転車を止め、こちらを
じっと見ている高校生の少女に気付かれます。
彼女は、ポケットのケータイをちらと示してそれ以上
近付いて来る事は無く注意深くこちらを見ていて
氏と光さんが立ち上がり歩き出すと会釈して
立ち去りました。氏はそこに彼女から届いた確かな
メッセージを受け取ったと書いておられます。


氏は、最後に不幸な人間への好奇心だけ盛んな社会で
あの少女の注意深くかつ節度ある振る舞いに生活に
なじんだ新しい人間らしさを見出す気がしますと
書いておられます。好奇心は誰にもありますが
注意深い目がそれを純化するのですとも。


これを読んだ時、私は自分ならどうだろうか?と
考えた。きっと、どうしたらいいか分からず、壮年の
婦人のように声を掛けることすら出来ないのでは
ないか? ましてや、少女のような気ずかいが出来るので
あろうか?
実際にいつもこうゆう場面に直面して氏はこんな対応の
出来る少女に出会って今時の若者を頼もしく思われた
ことだろう。私も含めてまだ日本人はこうゆう時とても
不器用なのではないかと思う。
これからは、知らない人にでも困っているなと思ったら
気軽に「何かお手伝い出来ますか?」と
声を掛ける勇気を持とう。



写真の説明
上の写真は、1輪だけ咲いた黒百合。
下はモモちゃんの肉球。三毛は肉球も口の中も模様が
あるのです。口の中はさすがに写させてくれません。